講演を聞いていない方には理解しずらいまとめとなってしまいましたが、研修の内容を掲載します。
「税と社会保障の一体改革」がいつの間にか「社会保障と税の一体改革」とセコイ名称変更となっていますが、この問題は、どの政党が政権を取っても避けては通れない問題です・・・・・がしかし、「無駄削減で黒字財政になる」と言い切った民主党にはその資格があるとは思えませんが、マニフェスト違反もここまで来ると慣れてしまいましたね。
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「社会保障・税一体改革」の動向
北海道大学教授 宮本太郎
なぜ今「一体改革」か?
? これまでの日本型生活保障とその機能不全
これまでの日本型生活保障は、なぜ小さな社会保障支出で安定した社会を維持できたか?その理由は・・・・・
・日本は社会保障にお金を使ってこなかった。
・会社が潰れない社会であった(土建国家、企業成長⇒長期雇用、低失業率)国行政が会社を守り、会社が雇用を守る⇒生活が成り立つ社会であった。社会保障の支出は定年後に集中していた。(高齢者向けの支出が多すぎる社会保障)
・雇用の変容、家族の変容、少子高齢化の進行の中で、これまでの仕組みは機能不全に陥った。阪神大震災頃がターニングポイント。
・土建国家と日本的経営解体が本格化
・非正規労働者が初めて1000万人を突破。
・共働き世帯の急増
・単独世帯が1000万世帯を超える。
・男性・女性の未婚率が急増。
・生産年齢人口の減少
・高齢化率の急上昇。
? 社会の持続困難化
現役世代が経済力でも、数の上でも、つながりにおいても弱体化し再配分機能が低下している。
・現役世代の支援
・保健国家の形成(医療と介護のイノベーション)
・行政の効率化
社会の持続困難への対応がなされなければ財政の持続困難も確保されない。
その対応として高齢者を支える分母を強くする政策
・女性就業率の向上
・若年層就労支援
・労働生産性上昇
・出生率引き上げ
・高齢者の社会参加(分子を分母へ)
? いかなる改革を目指すべきか?
・世代間校正の実現
・世代内格差の是正
・格差是正バラマキではなくサービス給付による「参加保障」
・経済との好循環(参加保障により雇用を強める)
社会保障改革に関する有識者検討会報告「3つの理念と5つの原則」
3つの理念 ・参加保障 ・普遍主義 ・安心に基づく活力
5つの原則 ・全世代対応 ・未来への投資 ・公共サービスの分権的・多元的供給体制 ・包括的支援 ・負担の先送りをしない安定財源
? 国際経験からみた社会保障改革
雇用を強める社会保障の国は、GDP成長率が高く財政が黒字だ(北欧型)
ギリシャ、イタリア危機は、公共サービスが低く現金給付が大きい社会保障を行ったことによるものだ「雇用を弱める社会保障」を行った結果である。現金給付から現役世代を含めたサービス給付にシフトすべきであり、「雇用を強める社会保障」を行うべき。
? 格差是正と参加保障
・年金改革で低年金層への加算と高所得層へのクローバック(年金5万円以下500万人)
・医療、介護、保育、障がい各分野の自己負担について、共通番号にもとづいて総合合算制度導入
・介護保険1号保険料の低所得者減額と介護保険納付金の総報酬割
・税制改正(課税所得アップ)
・子ども子育て支援、幼保一体化
・求職者支援制度
・短時間労働者の社会保険加入
? 「社会保障・税一体改革」と自治体
・国が主体となる現金給付から自治体が主体のサービス給付へ
・信頼性と透明度の高い給付のために分権化が不可欠
・教育と地域社会を結ぶ生涯教育、キャリア教育、教育に関わる所得保障など
・家族を地域社会を結ぶ、幼保一体化による就学前教育と介護、女性の雇用促進
・就労困難を解消し雇用につなげる。地域を支える技能強化、社会性をトレーニングする中間就労
・加齢による身体や心の弱体と地域社会を結ぶ
考察
今回の研修で、日本の現状から「社会保障と税の一体改革」が大変重要なことであることは理解できた。消費税を5%上げることにより13.5兆円税収があると推察されているが、この数字も正確なものではないと同時に、社会保障4経費の合計額が37兆円で、雇用等には一切使うことができない。現金を給付するばらまき政策ではなく、経済対策はもとより就学前教育や職業訓練、求職者支援金などで個人の能力をアップし、家計所得増大や就労率を上げ経済活動への参加を促したり、消費拡大や人的資本投資、社会関系資本整備などにより安心な社会を築くことが、強い経済、強い財政を作ることになるのではないか。
朝日新聞に掲載された信用度調査で、官僚・政治家・宗教は80%もの人が信用していないという結果が先生から提示された。低信頼社会日本を作りかえるのは政治家と行政の使命であると再認識した。
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