ひまわりのたね通信

議員定数と報酬、ミッション終了間近

 今期議会に与えられたミッションのうち最後に残った一つが議会の定数・報酬に関するものです。今期では明確な答えは出せなかったものの、議会活性化特別委員会で議論を進めた報告書が出来上がりました。
 地方自治法100条の2、専門的知見の活用で昇秀樹先生に依頼しご指導頂いた最終意見書が昨日報告がありました。
 以下意見書です。

     可児市議会における議員定数と議員報酬に関する意見書

                    名城大学都市情報学部 昇 秀樹

1.基本的な考え方
現在、議員定数と議員報酬の問題は、市民の関心度が非常に高いが、その多くが削減ありきだけの声になっている。しかし、本当に市民にとって議員定数と議員報酬は、少なければ少ないほどいいのだろうか。
どんな組織も、そのミッション(使命と役割)との関係でスタッフの数やその処遇等が決められる。議員定数と議員報酬も、市民が議会、議員に何を求めるかのミッションによって決められるべきである。
地方議会のミッションを考えたとき、議会は、市民の代表として選挙で選ばれた多様性に富む合議体であり、そこで、数ある地域課題に対して徹底的に議論し、最適な合意形成を図ることと言える。また、その過程は市民に明らかにされなくてはいけない。
求められるミッションから地方議会を大別すると、ボランティア型で人数が多いチェック監視機能に特化したヨーロッパ型と少数精鋭のプロ集団で政策提案までする北米型の議会に分けられる。
現在の日本の地方議会を見たとき、複雑、専門化する地域課題の解決において、その仕事量は世界的にみても非常に多い。これからの可児市の議会の将来像を考えると、チェック監視機能だけではなく政策立案、政策形成も行うプロ化議会が求められていると考える。可児市議会における議員定数および議員報酬の検討はこれが基本となるのではないか。

2.議員定数について
 前提として地方議会の定数は組織のミッションとの関係で決めるべきだと考える。
ひとつに、可児市議会が政策形成に関わるプロ化の議会を目指すとなると、最適な時期に最適な意思決定をする必要性から、議論をするにふさわしい定数となる。十分な議論をする上限範囲は、10人から20人あたりであろう。よって、本会議だけで議論する場合はこの数値範囲となるが、議会の運営が、多くの案件を能率的にかつ専門的に審査する委員会中心主義となると、委員会の数とその適正な委員数から考えることになる。経験と実績等から、1委員会あたり最低で6名から上限は7、8名程度が議論を活性化する上での適正値だろう。 
 次に、議員定数は、いろいろな要素、例えば、地域や職業、年齢、性別等を
反映したほうがよい。これが合議体の特徴であり、強味となる多様性である。
しかし、あまり多様性に富むと適正な意思決定ができない。
この多様性と意思決定のあり方に折り合いをつけることが議員定数の確定と
なる。ただし、どちらかと言えば多様性が主で、意思決定の適正性は従の関係にあるのではないか。

3.議員報酬について
議員報酬の根拠も、市民が議会に何を求め、それに応じた報酬額であるのかによって決まる。よって、しっかりとした額を科学的に算出することは困難で幅をもって決めていくものとなるだろう。その決め方においては、ミクロ的な手法とマクロ的な手法の両方で検討するべきであり、ミクロ的な手法は、議会・議員の活動量の積み上げであり、マクロ的な手法は、類似団体等との比較論となる。
特にプロ化議会における重要な役割として、まちの最終的な意思決定を行う
議決権があるが、これを民間にあてはめると常勤の取締役会のレベルに相当するのではないか。これら重要な責務を担っている点から考えると、現行の可児市議会の報酬が執行部の課長レベルの年収より低いというのは違和感がある。
また、議員という職種は、ホワイトイグゼンプション的な職種であり、時間
×単価の労働価値説で評価されるものではない。時間×単価は参考値に留まるのではないか。どのような役割において、どのような効果をもたらしたかという効用価値説で評価するべきものだろう。効用価値説で報酬を計り出すのは難しいが、これを基本的な考え方とすべきだろう。

4.まとめ
 議員定数と議員報酬の決定は、最終的に主権者でありスポンサーである市民
が納得する水準による。
これまでの地方議会は、市民に議会が見えておらず、その存在意義や役割が
正しく理解されていなかった。だから、市民は安ければ安いほどよい、少なけ
れば少ないほどよいとの考えになる。議員定数と報酬の問題は、議会改革と議
会の見える化がセットである。議会、議員がミッションをしっかりと果たし、
それを市民にしっかりと伝え、議会の重要性をわかってもらうことが、適正な
定数と報酬の決定につながるのではないか。市民が納得するまで議会・議員の
質を高めることが必要である。

5.これからの地方議会のあり方
現在、全国の市町村議会では無投票当選が増え、選挙であっても立候補者が少ない現実が起きている。同時に投票率の低下も留まらず、民主主義が危機的な状況にある。その原因のひとつに政治家がリスペクト(尊敬)されていない風潮があげられる。マスコミがそれを増長している傾向もある。
議会は、議会制民主主義において自治体の最終の決定権とそれに対する責任を負っている。それ故、議員という職業は、市民のリスペクトがなければ成り立ちにくい。社会のルールを決定する政治家の仕事がリスペクトされ、子どもたちが憧れる仕事であることが自由民主主義の社会を支え、将来を創る。
これからの地方議会のあり方を考えたとき、経済、文化と並び、政治も重要視しなければいけない。政治家をリスペクトする雰囲気を社会全体でつくるべきである。また、議会、議員も、課された重責を認識し、リスペクトされるよう自覚をもって行動するべきであることは言うまでもない。
しっかりとした理念を持って、しっかりとした行動をし、それをしっかりと伝えれば、多くの市民は、議会・議員を正当に評価するようになるのではないか。定数と報酬の実現はその延長上にあると思う。

 定数と報酬を今までにない見地から意見を述べられています。働く議員と働かない議員との格差をどうするか?今後の大きな課題ですが、少なくとも可児市議会は働く議会へと変わりつつあります。

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