JIAMトップマネジメントセミナー
プラチナ社会における産業振興〜新規ビジネスモデルの創造〜
プラチナ構想ネットワーク会長、東京大学第28代総長 小宮山宏氏
一部飢餓で苦しんでいる国も存在するが、肥満で苦しむ人が増えた現代社会、1900年頃の世界の平均寿命は31歳ほどであったが、今は70歳を超え人類の課題は多様化した。世界の一人あたりのGDPと平均寿命、CO2濃度はここ100年で大きく伸び同じ動きをしている。人工物(車、鉄鋼、家など)が飽和状態となり、今後の資源需要は減少し都市鉱山で賄えるような社会と転換していく。日本は高度成長を成し遂げ、公害を克服し、オイルショックによるエネルギー危機を克服し、長寿社会を実現した。課題解決実績のある課題先進国であり、今後は誇りを持って自由に輝く社会、モノも心も豊かな社会をプラチナ社会と定義し、自然共生社会の創生を目指すべき、その周辺に新たな産業が生まれる。例えば、省エネ・新エネ産業。一次産業。循環型社会。健康で安心な加齢。イノベーションによる新産業。文化・芸術・スポーツ。生物多様性。公害克服。地球環境など。なかでも健康の産業化に注目してみると、健康住宅・食サービス・ボディケア・装置・健康開発都市・交通・ビークル・ツーリズム・リラクゼーション・エンターテイメント・エコマネー・保険金融・PHRサービス・医薬品・予防医療・再生医療・支援ロボット等々、その種類は大きく広がっていく。産業、家庭、オフィスなどでのエネルギー消費は確実に低下しており、今後も技術革新によりこの傾向は続くとみられる。一方世界ではBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続き「VISTA」と呼ばれるベトナム(V)、インドネシア(I)、南アフリカ(S)、トルコ(T)、アルゼンチン(A)などの国が経済発展している。日本の役割はこれらの国に対して経済発展と同時に可決しなければならない諸問題について指導することが期待される。また、ビジネスチャンスとも捉えることができる。
活力あふれる地方経済の実現
日本経済団体連合会 常務理事 根本勝則氏
経団連は会員数1500社・団体で構成され、職員数220名の一般社団法人で日本の国益や将来を見据え、企業と企業を支える個人や地域の活性化を引き出し、経済の自立的な発展と国民生活の向上に寄与するとなっている。政治・行政と緊密な連携を図り2030年までに目指す国家像として、?豊かで活力ある国民生活を実現する?人口一億を維持し、魅力ある都市・地域を形成する?成長国家としての強い基盤を確立する?地域規模の課題を解決し世界の繁栄に貢献するとしている。また、国が進める日本再興戦略では経済団体として?地域しごと創生会議への参画?企業の地方拠点強化?奨学金を活用した大学生の地方定着等?地方創生人材支援制度?プロッフェッショナル人材の地方への還流。以上の協力を要請されている。中でも企業の地方移転強化では、各社模索をするものの情報管理や雇用の問題からあまり進んでいない。その他、プロフェッショナル人材事業による人材の地方への還流、地方創生カレッジにて人材の育成、企業版ふるさと納税制度、特区の活用など政府の制度を利用し積極的に取り組んでいる。地方経済の活性化については、地方経済団体との連携を強化し各地で開催する経済懇談会で意見交換し視察も行う。また、未来都市モデルプロジェクトを実践し地方都市の活性化を図っている。最後に、本社機能の地方移転には、交通インフラ等の事業環境整備や法人税・法人事業税の優遇、不動産取得税等のイニシャルコストの軽減など、地方拠点の拡充・強化に効果的な施策・インセンティブが必要であるとの調査結果が出た。
「地方だから出来るベンチャー起業」〜チームのことだけ、考えた。
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏
今治市の地方創生のk-ワードは「よそ者・若者・ばか者」「資産の棚卸しと活用」「時間はかかるが、お金は最小限(資金は人にかける)」とにかく凄いよそ者に地域へ来てもらうこと。サイボウズ社は近年クラウドで再成長し売り上げ7000億円へ。世界一使われるグループウエアメーカーを目指し、売上や利益よりも利用者数にこだわっている。1997年に松山市にて3人で起業。2008年に東証マザーズ上場。地方での起業には地域に根差した、地域の問題を解決する企業を促進しるべき、数を多く育てることと若者がはじける場づくり。刺激を与える「場」作りと運営が重要だ。今後、クラウドの活用は不可欠。徹底的なクラウドの活用により地方の物理的ハンデを克服。SNS(世界中と情報交換)。クラウドソーシング(都会の仕事を地方で受注)。クラウドファンディング(志でお金を集める仕組み)。シェアリングエコノミー(設備を保有しなくてよい)。IoT(世界中の情報をリアルタイムに収集)。これらを使いこなせれば地理的なハンデは激減し、対等以上に勝負できる。古臭いコミュニティーを破壊し新しいものを作る。100にいれば100通りの人事制度があってよい。働き方の選択→働き方の多様化へのチャレンジ。
結論、地域起業家を育成する必要がある。若者の感覚でコミュニティーの再構築。クラウドサービスを駆使して地方のハンデを縮小する。新しい働き方を提案し人材の定着や出生率の向上に繋げる。
現場発のものづくり地域戦略〜地域経済を支える良い設計の良い流れ〜
東京大学大学院経済学研究科教授 藤本隆宏氏
企業が来たくなるようなまちづくりをすること、目指すべきものは「暮らしの未来」ビジョンを示すこと。将来世代との対話を重視(フューチャーデザインバックキャスティング発想)将来世代の暮らしをともに作っていく。地域にある可能性の束→暮らしの未来を語るあるべき姿→まちづくりの本気度で、人が持つダイナミズムを引き出す。「もの作りは流れづくり、その流れをつくる人づくりが大切」企業はいい設計といい流れにより、顧客満足度を上げる。そこから利益が生まれ地域の雇用を守る。付加価値を上げることにより三方よしを実現する。
考察
このたびの研修では4人講師から、それぞれの立場から個性的且つ興味深い話を聞くことができた。人口減少・少子高齢化時代に入る日本にとって大切なことは地方を守るということであると再認識した。地域が抱える課題を解決してこそ国が抱える課題を解決することができるのではないか。世界情勢やこれかの経済成長や需要について、地方都市であってもすべてを勘案し政策・施策を決めるべきだ。また、若い世代との対話する機会を増やすことで、コミュニティーの再生や新しい産業の創設、活力ある地方経済の実現が可能となる。画一的ではなく多様なライフスタイルに変化した時代に則したまちづくりが必要となってきた。可児市の未来の方向性を決める場合、行政としてその機会が多くあるとは言いがたい現状にある。議会が進めてきた議会改革のさらなる推進と高校生議会、地域課題懇談会などの枠組みをさらに広めるとともに、議会報告会の充実を図り新しい政策形成サイクルでこれら意見を反映させ、議会としての意見を集約し行政運営に生かすよう今後も検討を重ねる必要がある。
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